でんさいの譲渡、どれを誰に回す?一人経理のためのAIへの指示
こんにちは。松原市で行政書士をしておりますレガート行政書士事務所の秋月です。
私は行政書士の仕事のほかに、経理の実務を15年以上続けています。仕訳や記帳はもちろん、振込やでんさい(電子記録債権)の管理・運用まで、日々の経理を実務で担当しています。
でんさいの譲渡は、とくに「采配」が難しい作業です。しかも、一人で経理をしていると、「これで合っているのかな」と、誰にも相談できないことも多いと思います。
この記事は、そんな一人経理の方に向けて、私が実際に考えていることと、AIに作業をお願いするときの指示の書き方をご紹介します。
でんさいの譲渡で、いちばん難しいのは「采配」
でんさいを受け取る側は、なんとなく分かりやすいのですが、支払いに回す側になると、考えることが一気に増えます。
手元にいくつかの債権があって、支払先もいくつかある。どの債権を、誰に、いくらずつ回すのか。この組み合わせを決めるのが、とても難しいのです。
例:2つの債権で、3社に支払うとき
たとえば、次のような場合です。
- 手元のでんさい:300万円と15万円の2つ
- 支払先:Aに50万円、Bに80万円、Cに30万円(合計160万円)
私なら、次のように考えます。
- いちばん金額の大きいBには、15万円の債権をそのまま回し、残りの65万円を300万円の債権から切り出す
- Aの50万円、Cの30万円は、300万円の債権から切り出す
- 結果として、300万円の債権は、155万円が手元に残る
小さい15万円の債権は、細かくなりすぎる前に、使い切ってしまうのがポイントです。
考え方①:分割より、一括で渡したい
債権を分割して渡すこともできます。ただ、私はなるべく、分割にならないように組みます。
- 受け取る側は、債権の件数が増えると、その分だけ仕訳や管理の手間が増える
- 渡す側も、明細を作る手間が増える
- 小さな債権を渡す回数が増えると、お互いに事務が煩雑になる
相手の仕訳の大変さを考えると、「まとめて、きれいに渡す」ほうが、お互いに楽になります。
考え方②:期日で、相手を分ける
同じ金額でも、債権の期日によって、相手にとっての意味は変わります。
私は、次のように考えています。
- 期日が遅い債権は、資金に余裕がありそうな、大きな会社に回す
- 期日が早い債権は、資金繰りに余裕が少ない、中小企業や下請けの会社に回す
数字を合わせるだけではなく、相手の事情も考えて決める。ここが、経理の采配の面白いところであり、難しいところです。
譲渡の前に、確認すること
譲渡をする前に、次のことを確認しておくと安心です。
- 支払予定額(相殺がある場合は、相殺したあとの金額)
- 手元の債権の金額と期日
- 使ってはいけない債権(期日が長すぎるものなど)がないか
- 支払先ごとの、譲渡の件数の上限(相手に迷惑をかけないため)
- 配分したあとの、支払先ごとの合計と差額
これを毎回、手で確認するのは、とても手間がかかります。そこで、AIに作業をお願いしています。
AIに「でんさい譲渡」をお願いするときの指示の書き方
私が使っている指示を、取引先の名前などを外して、参考までにご紹介します。会社ごとにルールは違うので、ご自身のところに合わせて変えてください。
最初に、使う資料とやることを書きます。
- 支払管理表と、銀行から出力した、振出・譲渡の電子記録債務のPDFを確認してください
- 対象の支払日の「でんさい譲渡」の配分を行ってください
- 作業のやり方は、あらかじめ用意した手順書に従ってください
次に、配分のルールを書きます。
- 支払管理表の、相殺後の支払額を、支払予定額とする
- 期日が長すぎる受取債権は、使用しない
- 一括で譲渡できるものは、一括を優先する
- 小さな金額の受取債権は、できるだけ分割せず、全額を譲渡する
- 小さな金額の譲渡は、極力作らない
- 支払額に応じて、譲渡の件数の上限を決める
- 例外の取引先は、個別のルールを別に書く
そのあと、作るものを書きます。
- 譲渡が複数件ある支払先だけ、送付用のExcel明細と、会社ごとのPDFを作る
- 取引先ごとに、明細の形(列や表示する項目)が違う場合は、先に書き分けておく
- 金額や相殺額は、過去の月から流用せず、今回の資料から取得する
最後に、確認することと、やらないことを書きます。
- 譲渡PDFの全明細と、配分表が一致していること
- 振出PDFの支払先・金額・期日が、支払管理表と一致していること
- Excelに、数式のエラーや、文字切れがないこと
- 1円などの差が出たときは、勝手に直さず、報告すること
- 元のデータは上書きしないこと
- 銀行へのアップロードや送信は、行わないこと
AIにお願いするときのポイント
ポイントは、「ルールを先に決めておくこと」と「やらないことを書いておくこと」です。
- 配分のルールを、文章にしておく。自分が頭の中でやっていることを、書き出すところから始める
- 最終確認の項目を、先に書いておく。AIが作った表を、人が確かめるときにも使える
- 勝手に直さず、報告してもらう。1円の差も、見逃さないため
- 銀行への送信など、取り返しのつかないことは、AIにはさせない
AIは、とても便利です。ただ、最後に確認して、判断するのは、人の仕事です。
経理は、数字だけでなく「相手」も見る仕事
AIは、ルールの通りに配分表を作ってくれます。でも、「この会社は、今月は資金繰りが厳しそうだから、早い期日のものを回そう」という判断は、人にしかできません。
数字を合わせることと、相手のことを考えること。その両方をするのが、経理の実務だと思っています。
取引先の名前や金額を、AIに入れるときの注意
実際の取引先名や金額は、会社の大切な情報です。AIに渡す前に、会社の情報の扱いのルールを確認しておくことをおすすめします。
このブログの例も、実際の取引先や金額ではなく、「たとえば」の数字で書いています。
よくいただくご質問
- でんさいは、分割して譲渡できますか?
できます。ただ、分割すると、受け取る側の仕訳や管理の手間が増えるので、私はなるべく分割にならないように組んでいます。
- AIに任せて、間違いはありませんか?
間違いが出ることもあります。だからこそ、最終確認の項目を決めておき、人が確かめることが大切です。
- 期日の遅い債権を渡すと、相手が困りませんか?
困る場合があります。そのため、私は、資金に余裕がありそうな相手には期日の遅いものを、余裕が少ない相手には期日の早いものを回すようにしています。
一人経理の方へ
一人で経理をしていると、「これは、ほかの会社ではどうしているんだろう」と思うことが、たくさんあると思います。
この記事は、あくまで私のやり方の一例です。会社ごとにルールも取引先も違うので、参考までに、ご自身のところに合わせて考えてみてください。
「うちの場合は、どう考えたらいいですか?」といったご相談も、お受けしています。経理の実務の経験をいかして、一緒に考えます。
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