AIで遺産分割協議書を作る前に知っておいてほしいこと|行政書士が見て気になった4つのこと
この記事で分かること
- AIに指示する「プロンプト」がなぜ大事なのか
- AIで協議書を作る前に、やっておきたいこと
- 行政書士が見て気になった4つのこと
- 税理士・司法書士・行政書士、どこに相談したらいいか
はじめに
先日、友人から連絡がきました。
「AIに聞いて、遺産分割協議書のたたき台を作ってみたんだけど、どうかな?」
あくまでも案の段階だそうで、見てほしいとのことでした。
実際に見てみると、一見きちんとした書類の形にはなっていました。ただ、行政書士の目で見ると、「このままでは使えない」と感じるところがいくつもありました。
AIに指示する「プロンプト」がいちばん大事
AIに何かを作ってもらうとき、いちばん大事なのがプロンプトです。
プロンプトとは、AIに出す「指示」や「質問」のことです。
ふわっとした質問をすると、AIもふわっとした回答になってしまい、中途半端な出来上がりになります。
たとえば、次のような指示だったとします。
- 父親が亡くなった
- 母親、長男、長女、次男で話し合った
- 次男がすべて相続する
これだけだと、AIは書かれていない部分を想像で埋めるしかありません。
遺産分割協議書のような公式な書類をAIで作るときは、慎重にならないといけません。
じゃあ、どう聞けばよかった?
いきなり「遺産分割協議書を作って」と頼むのではなく、順番を変えてみてください。
まず、家族構成や、実際の法律に関する資料(ウェブ)、遺産分割協議書について書かれた文章などを、AIに読ませてみるといいでしょう。
資料は、法務省や裁判所など、公的なサイトのものを選ぶのがおすすめです。個人のブログやまとめサイトには、古い情報や間違いが含まれていることもあります。
そして何より、その前に自分で調べておきたいことがあります。
- 遺産分割協議書とは何か
- これを作るために、絶対に外せないものは何か
- 入れないといけない文面は何か
ここをAIだよりにするのではなく、自分で勉強することが、いちばんの肝になります。
AIが出した内容が合っているかどうかを確かめられるのは、基本を知っている人だけだからです。
実際に見て、行政書士が気になったところ
AIが作った協議書は、一見すると書類の形にはなっていました。ただ、実際に使うとなると、気になる点がいくつもありました。
1つ目は、亡くなった方(被相続人)を特定する情報が足りないことです。
死亡日、本籍、最後の住所などが書かれていないと、誰の相続なのかが特定できず、銀行や法務局での手続きが止まる原因になります。
2つ目は、借金などの債務の扱いが書かれていないことです。
財産のことだけでなく、債務を誰が引き継ぐのかも話し合っておかないと、あとでもめる原因になります。
3つ目は、不動産の書き方です。
土地や建物は、登記事項証明書に書かれている通りに、地番や家屋番号まで正確に書く必要があります。「〇〇市〇〇町」のような書き方では、登記の手続きで受け付けてもらえないことがあります。
4つ目は、家族の状況によって変わる制度は、AIがすべて拾ってくれるわけではないことです。
たとえば、配偶者居住権という制度があります。亡くなった方の配偶者が、そのまま自宅に住み続けられる権利のことです。ただし、相続が始まったときに、その建物に住んでいることが条件になります。
お母さんが施設に入所している場合は、この権利が使えない可能性があります。
こうした制度は、名前は知っていても、使える条件まで知らない方が意外と多いです。
AIは、聞かれたことには答えてくれますが、家族の状況に合わせて「この制度は使えませんよ」「こちらも検討したほうがいいですよ」と、先回りして教えてくれるとは限りません。
だからこそ、AIには全部を網羅することはできない、と知っておいてほしいのです。
もちろん、専門家に聞くのが一番です
AIは、あくまで下書きの道具です。
最後に「この内容で本当に大丈夫か」を確かめるのは、専門家の仕事です。
困りごとによって、相談先は変わります。
- 相続税が関わりそうなとき:税理士
- 不動産の名義変更(相続登記):司法書士
- 相続人の確定や、遺産分割協議書の作成:行政書士
迷ったときは、まず身近な専門家に「これは誰に相談したらいい?」と聞いてみるだけでも大丈夫です。
まとめ
最近はAIがとても便利になったので、AIですべてを解決させようとする人も多いかもしれません。
でも、遺産分割協議書のような大切な書類は、順番が大事です。
- まずは、AIではなく、自分で制度を調べてみる
- そのあとに、AIに聞いてみる
- 聞くときも、しっかりとしたプロンプトの土台をつくる
そして最後は、専門家に確認してもらうと安心です。